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二次元というジャンル
エロアニメやエロゲを収集している友人に「二次元の魅力とは何か?」率直に聞いてみました。曰く、「二次元には嘘がない」そうです。この物言いは少し逆説的で、「全て作り物であるが故に世界に没入できる」という意味らしい。例えば、AVには女優の演技があり、カメラアングルがあり、演出があります。エロアニメやエロゲにももちろん声優の演技やシーンの構図といった要素は存在します。しかし、二次元の世界では全てが作為的であるが故に、よりフィクションの純度が高まります。二次元という世界で抽象化されたキャラクター達は、現実の世界から隔てられているが故に魅力的である、ということだそうです。
それは写真と絵画の関係に近いのかもしれません。現実の再現度という点において、絵画は写真に勝てませんが、全く性質の異なる付加価値を発揮し、多くの愛好家、芸術家達を虜にしてきました。そこには人間の想像力に働きかける「何か」があるのです。エロゲやエロアニメというと「俗の極み」であるのかのように思えるかもしれませんが、オタクたちに及ぼす心理的な作用は、芸術作品と同じ性質のものなのかもしれない、そう指摘する心理学者もいるようです。
事実、メジャーなアニメーターやスタジオの手によるアニメ作品や、著名な漫画家による漫画は、すでに芸術的な価値が認められていますよね。裸婦の肖像画が卑猥か否か、という論争が絶え間なく続いているように、二次元作品は常に俗と芸術の間で揺れ動く存在なのかもしれません。
二次元の通販はなぜ人気?
最近、二次元グッズは通販の売り上げが大変好調なのだそうです。特にエロアニメ、エロ漫画、エロゲームといったいわゆる「18禁もの」は人気が高く、ネット販売の売り上げが店頭販売の売り上げを凌駕しつつあります。二次元が通販で売れる理由としては、やはりオタク達の羞恥心が大きな要因として考えられるでしょう。一般に、アダルト向け作品を店頭で購入することに抵抗を感じている男性は少なくありません。完全に開き直って秋葉原を闊歩するようなオタク達もいますが、彼らはごく一部の限られた存在であり、大多数のオタク達は自分の趣味・嗜好を隠そうとする傾向があります。萌えアニメやゲーム程度ならまだしも、性的な嗜好を知られるアダルトコンテンツとなると、その傾向は一層強まることでしょう。
二次元に限らず、三次元の映像作品もネットによる通販、レンタルは人気ですが、社会的な認知度からいえば、三次元作品はまだオープンに購入することが許容されています。二次元の作品で性的な充足を得ている人間については、反社会的とはいわないまでも、ある種の偏見が存在するということは否めません。とりわけ、低年齢の女性キャラを描くロリータものについてはその傾向が顕著で、メディアなどではしばしば、ロリータものを購入するオタク達のことを犯罪者予備軍のように取り沙汰します。彼らが人目を忍んで通販を利用するのも、無理からぬ話といえるのではないでしょうか。
また、ブロードバンド環境が整備されたことにより、ダウンロード販売(購入)が手軽になった、という点も通販人気に拍車をかけているようです。
二次元は人気と社会の合わせ鏡?
二次元作品を古いものから順に眺めていくと、その時代に応じた日本人の心のありようを見て取ることができます。エロゲやエロアニメといったアダルト向け作品も例外ではありません。主人公やヒロイン達には、読者、視聴者、ユーザーの理想像が間違いなく反映されていますし、ただ作品のクオリティが向上したので人物描写が洗練されたというだけではなく、消費者の心性が造詣に現れているように思えるのです。
例えば、ロボアニメやヒーローアニメの創世期を見てみましょう。ほとんどの主人公は熱血漢であり、ヒロインはおしとやかな性格の持ち主です。翻って現代のキャラクター達を見てみると、主人公はいわゆる「草食系男子」が多く、ヒロインは勝気なじゃじゃ馬タイプに描かれるケースが増えています。そうした女性キャラを主人公とした「戦闘美少女もの」は、すでに人気ジャンルとして多くのファンを抱えていますし、その女性キャラたちに「女性の社会進出」といった社会のありようを敷衍してみることは、それほど難しい作業ではないでしょう。
「価値観が多様化した」といった類の言説は、すでにメディアで語り尽くされた感がありますが、それは二次元のジャンルにも同じことがいえます。キャラが多様化し、世界観が多様化し、受容のされ方が多様化し…etc。クリエイターが「原点回帰」を口にするとき、二次元のストーリーは勧善懲悪の展開と、正義感溢れるキャラクター達によって構成されます。では、果たしてエロゲやエロ漫画、エロアニメが「原点回帰」すると、どのような描かれ方をするのでしょうか。考えてみると面白いかもしれませんね。
二次元のアダルト文化
日本は、他に類を見ないほどに二次元の文化が発達した国だといわれています。漫画、アニメ、ゲームなどの分野では、常に世界の最先端をリードしてきました。興味深いのは、大衆向けの作品が人気を獲得していくにつれて、アダルト向けの作品も需要が高まった点です。即ち、エロ漫画、エロアニメ、エロゲームなど、これほどに次元のポルノグラフィが普及している国もまた、日本を置いて他には存在しないのです。
他国では、古くから二次元作品は「子ども向けの媒体」だという社会通念が存在し、大人たちは実写作品を楽しむのが「常識」であり「嗜み」とされてきました。映画や演劇といった作品が「芸術」として次第にその地位を高めていく中で、アニメや漫画などの二次元作品は、あくまでそれらの模倣品や亜流として扱われる国が多いのです。
一方、日本では国民的なアニメの存在も知られていますし、満員電車の中では大人たちも当たり前のように漫画を読んでいます。かつては「オタク」といえばごく一部の変人を指す言葉でしたが、二次元の創作物に性的な充足を覚える人々の存在も、徐々に社会的な認知を獲得しつつあります。この流れは今や国際的なレベルで波及し、日本のエロゲやエロ漫画、そして同人誌などの「萌え文化」に触発された人々は、新たなムーヴメントとして、これらの文化を積極的に受容しているように思えます。おそらく、今後十年のうちに、日本のオタク文化は世界を舞台にさらなる飛躍を遂げることでしょう。
二次元と同人
二次元作品は今や世界的な産業として注目されています。広義においては、大作CG映画なども二次元作品に含めることができるでしょう。日本発の漫画やアニメ、ゲームについては、今更その人気について語るまでもありません。ただし、日本特異の二次元の文化として、同人作品は非常に興味深い存在といえます。
特にポルノグラフィにおける普及は一大ムーヴメントともいえる程で、今やその市場はメーカー製のエロゲ、出版社のエロ漫画を凌駕しています。二次元作品から始まった同人活動は今や小説の分野にまで波及し、ライトノベルの形でアニメや漫画キャラクターの恋愛(あるいは性描写)が小説化されるまでになっています。
かつて、同人活動といえば、同じ趣味や嗜好を持った人々の創作活動を指す言葉でした。それが今では、「性的な描写を含んだ二次創作」という意味に語義が変化した感さえあります。ネット上では特にこの傾向が顕著で、「同人」というワードを検索すると、ヒットするサイトの大半が同人誌(漫画)に関係するホームページです。海外のサイトにおいてもDoujinを検索すると日本製の同人誌を簡単に見つけることができます。今やDoujinは、国際的な標準語として定着していると言っても過言ではなく、海外のオタクにはHentai(エロ漫画)と同じく、そのままの形で通用するワードとなっています。同人の人気が二次元作品全体のクオリティを底上げしている、という点を見ても、そこにはやはり日本の独自性を見出すことができます。
キャラクターの人気
ファッションでブランドが大きな意味を持つように、二次元キャラにも付加価値の要素があります。誰がデザインしたのか、どのアニメ、漫画のキャラクターなのか、声優は誰が演じているのかなど、様々なポイントが二次元キャラのイメージを大きく左右することになります。キャラクターの価値はオタクの嗜好によっても異なり、例えば声優マニア達は自分がファンである声優の演じているキャラクターに萌えるようですし、絵のクオリティにこだわるオタクは絵師やデザイナーが誰であるかという点にこだわりを見せます。
逆に、なんのバックグラウンドもないキャラクターが急に人気を博すというケースはほとんどありません。例えば同人誌は、人気アニメや漫画を元ネタにしているからこそ、あれほどの人気を集めているわけです。完全オリジナルの同人誌もないわけではありませんが、二次創作のものに比べるとやはり人気はいまひとつのようです。
ただ、キャラの造詣にはそれほどこだわらず、属性や性格に萌えるというオタクは多いようです。ツンデレキャラはまさに人気パーソナリティの好例といえるでしょう。デザインは異なっても、ツンデレという性格そのもにオタクは萌えてしまうわけですね。この手のオタクはオタクの中でもかなりコアな存在で、一般的にはやはり外見的な属性に惹かれるケースが多いといわれています。猫耳、眼鏡っ子、ロリータキャラなど、二次元ならではのアイドル達は根強い人気を持っているようです。
二次元と同人ブーム
二次元グッズは、全てのジャンルに同人活動の普及を見ることができます。漫画の形で描かれる同人誌は言うに及ばず、同人アニメ、同人ゲーム、さらには個人の製作するコスプレ衣装やフィギュアなど、あらゆるジャンルで企業・メーカー製品のクオリティを凌駕するような作品を目にすることができます。
興味深い点としては、アニメ、漫画、ゲームというジャンルにおいて、18禁の作品が大多数を占めていることが挙げられます。おそらくオタクたちの性衝動が、作品を創作するための原動力として機能しているのでしょう。古くから芸術と恋、愛情を絡めて論じる文化論は多いので、二次元文化もその類型と見なすことができるかもしれませんね。
言うまでもなく、同人作品を物するためには相応の技術が必要になります。クオリティの高い作品を作るためにはプロ顔負けの技量が必要なわけで、製作に要する時間も膨大なものです。かといって同人作品を販売しても、クリエイターは企業のように潤うわけではありうません。一部、商業目的のサークルも存在するようですが、大多数のクリエイター達はあくまでも趣味の一環として同人製作に携わっているようです。
ただ、企業の側ではこの同人ブームを見過ごさず、同人古本の流通や販売の委託をビジネスとして展開している店も少なくありません。通販サイトなどを見ると、今や国外にも専門店が多数オープンしている模様。doujinshiは国際語として、世界に通じる言葉になっています。
二次元とオタク
最近、「俺は一生を二次元に捧げる!」と宣言して、現実の恋愛と決別した生活を送る若者が増えているそうです。オタク達の中にはこのような形で、三次元(現実)と二次元を対立する世界としてモデル化する思考が一般化しています。現実で上手くいっている、成功している人々は「リア充」と呼ばれ、嫉妬の意味を交え揶揄されることもあります。
一方、欧米では二次元やリアル、ネット上の世界の対立軸を明確にすることはありません。例えば、ネット上の交流とリアルなコミュニケーションは、あくまで地続きのものとして捉えられており、日本ほどネット上の匿名性にこだわるユーザーも多くないようです。彼らの多くはSNSサイトなどで本名、顔写真を公開していますし、自分の身元をオープンにした上でコミュニケーションを図ることに抵抗がないように見えます。
日本においては、ネット上で別の人格やキャラクターを演じるユーザーも多く、原則として個人情報は全て秘匿されます。中には複数のキャラクターを器用に使い分けているユーザーもいて、男性が女性のフリをする「ネカマ」行為も頻発しています。ただ、オタク達は自分の趣味に関する事柄については、必ずしも匿名性の影に身を潜めてはいません。アイドルの握手会やイベントなどには非常に積極的にコミットしますし、同人イベントなども大盛況です。鉄道オタクなどは別にして、かつては「オタクの趣味は隠すのが当たり前」という時代がありました。今後は日本でもオープンな交流が活発化していくかもしれませんね。
グッズと秋葉原
秋葉原には一見したところ「なんの店なのか分からない」タイプの店が無数に存在します。店に置いてある商品は、エロアニメのDVDやエロ漫画、同人誌、エロゲーム、フィギュアなどのキャラクターグッズなど。オタクからすれば非常に魅力的なアイテムの数々ですが、ではなんの店か、と聞かれると、答えに窮するのではないでしょうか。あえてカテゴライズするとするなら「二次元ショップ」とでもいう他ないのかもしれません。ただ店によっては、書店、オモチャ屋、ビデオ店など、ウェイトを置いている商品を標榜して店名にすることも多いようです。
客層はいうまでもなくオタクによって占められているわけですが、最近の傾向としては外国人の増加が挙げられます。日本の二次元作品に興味を持ち、そのことが高じて秋葉原に来る、という旅行客が増えているためです。諸外国にも、こうした二次元作品をメインに扱う店がないわけではありませんが、やはり秋葉原ほどの規模でバリエーションに富んだ商品を扱っている場所は、他にないようですね。
「秋葉原に行くために日本に来る」という旅行者は、大抵は電化製品のまとめ買いを目的とした外国人か、二次元アイテムを買いに来た外国人に二分されているといわれています。政府が日本の二次元作品を「輸出産業」としてアピールしようとするのも、無理からぬ話といえるかもしれません。今やアニメ・漫画の国際基準は日本にあるとまでいわれているので、このことがなんとか国の利益に結びつくといいですね。
